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名古屋地方裁判所豊橋支部 昭和62年(ワ)108号 判決 1987年12月15日

原告

田中秀登

原告

浅井登代子

被告

東京海上火災保険株式会社

右代表者代表取締役

松多昭三

右訴訟代理人弁護士

楠田堯爾

加藤知明

田中穣

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告田中秀登に対し、金七二万一〇〇〇円及びこれに対する昭和六二年四月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は原告浅井登代子に対し、金八六万一〇〇〇円及びこれに対する昭和六二年四月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  この判決は仮に執行することができる。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  被告田中の父田中肇は、昭和五八年一〇月一一日被告との間で、自己所有の普通乗用自動車(三河五七に七二九七)を被保険自動車として搭乗者損害保険契約を締結した。

右保険契約の約款(以下「約款」という)第四章(搭乗者傷害条項)第七条には、次の定めがある。

(一) 当会社は、被保険者が第一条(当会社の支払責任)の傷害を被り、その直接の結果として、生活機能または業務能力の滅失または減少をきたし、かつ、医師の治療を要したときは、平常の生活または業務に従事することができる程度になおつた日までの治療日数に対し、次の各号に規定する金額を医療保険金として被保険者に支払います。

(1) 省略。

(2) 病院または診療所に入院しない治療日数に対しては、その治療日数一日につき保険金額の一〇〇〇分の一(注−本件の場合金七〇〇〇円)。

但書省略。

(二) 前項の医療保険金の支払は、いかなる場合においても、事故の発生の日から一八〇日をもつて限度とします。

(三) 省略。

2  原告田中は、昭和五九年三月一二日午後七時一五分頃、被保険自動車に原告浅井を同乗させて豊川市牛久保町城跡五番地先の市道交差点で停車中、小笠原健一運転の普通乗用自動車に追突され(以下「本件事故」という)、原告田中は外傷性頸椎捻挫の傷害を、原告浅井は頸部捻挫の傷害をうけた。

3  右事故により、原告田中は昭和五九年三月一二日から同年五月四日まで五三日間滝川病院に通院(内治療実日数一五日)し、次いで同年五月二二日から昭和六二年一月三一日まで金屋接骨院に通院(内治療実日数六三四日)治療し、その後も完治しないので現在も同院に通院治療中である。

右事故により原告浅井は、同年三月一三日から同年四月一七日まで滝川病院に通院(治療実日数七日)し、次いで同年五月二八日から昭和六一年八月一三日まで金屋接骨院に通院(内治療実日数二七四日)し、一旦通院を止めたが完治しないで昭和六二年二月一九日から現在まで同院に通院治療中である。

4  原告田中は、父田中肇と広告美術業を共同経営している者であり、事故の翌日の医師の診断や自覚症状はたいしたことはなかつたがその後だんだん症状が悪化し頭痛がひどく体がだるくなり微熱が出て首が廻らなくなつた。入院して治療したかつたが仕事の関係でそれもできず止むなく通院治療を続けたが結局仕事の方は殆ど全休という状態であつた。原告浅井は、事故当時小学三年の女児を持つ主婦で、小中学生相手の英語教室を担当していた。したがつて、本件事故により原告両名は甚大な被害を蒙るにいたつた。

5  被告は、本件保険契約に基づき、昭和五九年一一月二一日、原告田中に対し五三万九〇〇〇円(一日七〇〇〇円の割合による七七日分)、原告浅井に対し三九万九〇〇〇円(一日七〇〇〇円の割合による五七日分)を支払つたのみで、その余の支払をしない。

しかし、原告らはいずれも、一八〇日以上の実治療日数を経ているので、約款によれば一八〇日分の保険金を受ける権利がある。

6  よつて、被告に対し、原告田中は七二万一〇〇〇円(一日七〇〇〇円の割合による一八〇日分一二六万円から既払分五三万九〇〇〇円を控除した額)、原告浅井は八六万一〇〇〇円(一日七〇〇〇円の割合による一八〇日分一二六万円から既払分三九万九〇〇〇円を控除した額)と右各金員に対する訴状送達の翌日である昭和六二年四月一八日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実中、原告田中が、事故日から昭和五九年三月一二日まで五三日間滝川病院へ通院(内治療実日数一五日)し、同年五月二二日から同年九月一九日までの間に九〇回金屋接骨院に通院したこと、原告浅井が事故の翌日から昭和五九年四月一七日まで滝川病院へ通院(内治療実日数七日)し、同年五月二八日から同年九月一九日までの間に七二回金屋接骨院へ通院したことは認め、その余は知らない。

4  同4の事実は知らない。

5  同5の事実は認める。但し一八〇日分の保険金を受ける権利があるとの点は争う。

6  同6は争う。

約款第七条の②の「前項の医療保険金の支払は、いかなる場合においても、事故の発生の日から一八〇日をもつて限度とします。」というのは、その間の実通院日数の如何にかかわらず、事故発生から一八〇日までを最長期とし、その日までを被保険期間としてその間のみの実治療に対応する医療保険金を支払う趣旨である。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因1(搭乗者損害保険契約の締結及び約款第四章第七条の規定の存在)、同2(本件事故の発生及び原告らの受傷)の各事実、同4(実治療日数)の事実のうち、原告田中は昭和五九年三月一二日から同年五月四日まで五三日間滝川病院へ通院(内治療実日数一五日)し、同年五月二二日から同年九月一九日までの間九〇回金屋接骨院に通院し、原告浅井は同年三月一三日から同年四月一七日まで滝川病院へ通院(治療実日数七日)、同年五月二八日から同年九月一九日までの間に七二回金屋接骨院へ通院したこと、及び同5(保険金の支払―原告田中に対し七七日分五三万九〇〇〇円、原告浅井に対し五七日分三九万九〇〇〇円)の事実について、当事者間に争いがない。

二原告らは、約款第四章第七条の規定によれば、実治療日数が一八〇日を超えた場合は、実治療日数が一八〇日に達するまで所定の医療保険金(一日七〇〇〇円)が支払われるべきである旨主張する。

しかしながら、右規定の文脈上からも、又保険事故を大量に迅速に処理しなければならない保険制度からみても、「実治療日数の如何にかかわらず、事故発生日から一八〇日までを最長期とし、その日までを被保険期間として保険金を支払う」と解釈することが妥当であり、当裁判所は、原告ら主張のごとき解釈は採用しない。

なお、<証拠>によれば、被告は、事故の日から一八〇日を超えて保険金を支払つた事例は全くないことが認められる。

三以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの主張は失当である。

よつて、原告らの請求はいずれもこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官岡村道代)

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